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住宅調査隊 住宅調査隊とは住宅等、不動産購入は人生の一大事です。 調査隊は、建築に対して全くの素人の方に付き添い、その住宅に欠陥住宅がないか調べます。 もともと、友人達からそういった頼まれ事があったので、「こんなサービスがあったら」喜ばれるかな?という気持ちで始めました。
3月4日
電話が鳴った。 「木造の中古住宅を探しているのです。条件にあった物件があったので見にいきました。陽あたりも良く色々と条件にあっていたので購入したのですが」 しずかな口調でその女性は話し始めた。Fさんという20代後半の女性だ。 「契約後に気付いたのです。なんだかおかしいなと。ドアが勝手に閉まるのです。」 どうやらドアは普通の開きドアらしい。ドアが勝手に閉まるという事は柱が傾いている恐れがある。「それで気持ち悪いから、見てもらおうと思って電話したのです。」 契約前の意志決定の材料の一つとしてこのサービスがある事、裁判や民事の相談にのるような事は私では難しい事、等を話した。それでも見て欲しい、本当はどうなのか知りたいのだ、という事なので30分くらい話して電話を切った。 かなり切実だ。 当日、現地に着くとその建物は、確かに傾いているのが目視でわかる。8畳間の端端で7CMも高さが違っていた。少し異常だ。そこで基礎を調べてみた。Fさんの持っていた図面をみると、まるで鉄骨造の基礎だ。南側斜面に現場打ち杭を打ち、その上に鉄筋コンクリートの軸組・スラブが乗る。 しかしなんでこんなに傾くのだろう。杭は支持地盤まで達っしている。あ、北側に杭がないぞ・・・そして沈んでいるのは北側だ。 つまり沈む恐れのある南側はしっかり造ってあるが、北側は問題無しとして処理されたのだろうか。そして基礎の自重に耐えられず沈んだのだろう。 Fさんには残酷だが、事実を伝えた。ちゃんとした設計事務所の一級建築士が設計してもこういう事がある事。これを修復するのは非常に高額になる事。さらに話しを続けると、「こういう資料があるのですけど・・・」 その資料は契約後にもらったそうだ。大手M不動産の一級建築士がその住宅を調査したらしい。「床の傾き、柱の傾きが認められるが、生活には支障がないと思われる。」とあった。 冗談じゃない!床が7CMも下がっていると平衡感覚が狂うようだし、梁のほぞ・あり・かま継ぎはどうなるんだ?大きな地震でもあるとと思うとゾッとする。 こういった資料を「支障がない」と書く建築士も建築士だが、前もってそれを説明せずに契約後にそれを提出するM不動産もM不動産だ。実際イメージが非常に良い不動産会社なので、正直ガッカリした。大手の不動産会社だからと信用できないと痛切に感じた。 Fさんによると、M不動産は20万円までのリフォーム費を出す事になったそうだ。しかし20万円で傾いた床は治るものではない。なるべく食下がり少しでも修理代を多くする事を話し、欠陥住宅の相談先を紹介してその日は帰った。 その後Fさんからは連絡がない。せめて契約前に電話をくれれば・・・と思うと残念でならない。Fさんのご主人も「だまされた」とかんかんに怒っているという。あの家でどんな気持ちで生活しているのだろうか。物理的にも心情的にもつくづく気の毒な話しだ。 4月21日 「マンションを購入しようと思うのです。」20代後半のHさんという女性から電話があった。このサービスを知り、第三者的な目で評価して欲しいとの事だ。 そのマンションの住民に前もって不具合個所がないか調査し、現状を調べた。 購入前なので,不動産会社社長立会いのもと調査を始めた。 不動産業者にしてみれば、粗を探されるような気がするのだろう、だけどもこの調査は正直に事実を伝える事が目的だ。気がついた事はどんどん言おう。 古いマンションの場合、ウイークポイントは何点かあるが、特に目立った欠陥はない。が、マンションの宿命?である。結露・結露によるカビ等の被害はあったようだ。玄関を空けたとたんに、カビの臭いがした。 そう話すと、不動産会社の社長は「クロスを張り替えたのでその臭いではないですか」との事。 まさか。かびとクロスの臭いを間違える筈はない。私はある欠陥マンションのカビ被害にお付き合いし、数年相談を受けているが、マンションの形状と結露は非常に関係ある。 以前の持ち主がリフォームして出て行ったのも、カビだらけの部屋を見せるより、綺麗にリフォームしてからのほうが高く売れるという判断だろう、と言う事もありえますね。と遠慮なく話した。さすがに不動産会社社長は動揺を隠せなかったようだ。 最後に細かい注意点を数点、Hさんに報告した。すると不動産会社社長が横から「こういう不動産の購入は、悪い点を見たら買えませんよ。良い所をいかに気に入るかが大事ですよ。」すると今度はHさんが、「でも悪い所も全て知っていたいのです。それは悪い事ではないと思いますけど?」 不動産会社社長は一本とられ顔。(笑)今や購入側も知恵をつかう時代。うまくこのサービスを利用して頂いたようだ。 ●賢くなった消費者● このサービスをうまく利用して頂いている人達がいます。 「中古住宅を購入したいけど、購入後リフォームにいくらぐらい掛かるだろうか」 「これから契約するのだけど、他に瑕疵はないだろうか」 こういった部分は、プロでないとわかりずらいですね。そんな?にもお答えできるのです。この後の2件はその典型的な例です。 5月12日 電話が鳴った。Fさんは過去二度ほどリフォームでお付き合いのある方だ。 「息子が今のマンションが手狭で引っ越したいというのです。で、よい切っ掛けだから私達といっしょに住もうと言ってくれるのですが。」 「その物件が大分年数が経っていてリフォームしたら相当かかるのでは・・・と不安なんです。」 Fさんの地域にはこのサービス「欠陥住宅調査隊」を広報していない。なぜなら自転車で行くには少し遠いからだ。 しかしOBのお客様が頼って来てくれるのだから、行かない訳にはいくまい。 さて、現状は・・・まず地盤の調査だ。地元の人に過去ここがどんな土地だったか聞きこみ、推理をする。やはり、良い土地柄ではなかった。それが床の傾きに現れているのだろう。つまり、閉まらない窓や壁の隙間に現れるのだ。 ざっと調べあげ、今後この家を何年もたせたいか、どの程度直して暮らしたいか対話し、簡単な見積もりを報告した。 この見積もりを元に、Fさんはこの家の購入を検討する事だろう。 2001年6月12日 電話が鳴った。昨年秋発売された扶桑社の「住まいの設計12月号」(四季自然建築アトリエ掲載号)を読んで電話をしてみたというTさんである。 「今、宅地が更地のままで困っています・・・正確にいうと業者が仕事をやめてしまい、その後手付かずで何も進展しないのです。」 話を整理すると、まずTさんは 1. 中古住宅付の宅地を買った(1997) 2. 家が古いこともあり、横浜市で行っている耐震診断を受けた。結果報告は今すぐ危ないという事ではなかったが、高低差のある土地故大谷石の擁壁があるが これが老朽化している事、建物もその擁壁に近いので気になるという事であった。(1999) 3. ある日、道路からみると大谷石が道路側に膨らんでいるのがわかった。前回の調査の事もあり不安になったTさんは 大谷石の補修ができないか考え始める。 4. 補修してくれる工事屋さんを知らないTさんは、(大手ならば大丈夫だろう)とDハウスに連絡をとった。 5. Dハウスはすぐに現場に駆けつけた。そして現場をチェックし建物をチェックしてこうTさんに報告した。「大谷石の擁壁は極めて危険な状態です。もし地震がくれば明日にでも崩壊するでしょう。そして建物も当然壊れてしまいます。そうなるとTさんの家族の命に関わることですし、そればかりか道路側に崩れるので道路にいる方も危ないことになります。」(1999/4) 6. Tさんはあまりにも危険な状態だと知り、不安になった(に違いない) 後で解ったことだが 土地は地山で非常に強い地盤だった。大谷石がはらんでいたのは植木の根が押していただけだった。つまり大谷石は補修程度で済んだし、地震があっても相当強かった。 7. ならどうすれば良いの?という事で、「擁壁を造り替え、建替えましょう」という提案であった。そんな大袈裟な事は考えていなかったTさんは当然面食らう。Tさんは故宮脇壇のファンで「建替えるなら宮脇さんに頼みたい」と思っていた。ところが宮脇は亡くなっていたしお弟子さんには興味がなかったので、建築家に頼む家造りは考えていないところだった。 8. 1も2もなく建替える、という心境ではない。中古とはいえ住宅付の土地を手に入れたばかりのTさんに、「擁壁をなおし新築をする」のは重荷だったに違いない。 9. しかし「あまりにも危険で人命がかかっている」「地震がきたら必ず壊れる」と言われたら、Tさんには考える余地はなかった。 10. Dハウスに連絡してから2〜3ヶ月で契約(1999/5) 11. そして着工。(1999/10/1) 12. 異変に気が付いたのは「擁壁工事が明日コンクリート打ち」という日である。夜遅くに知り合いのAさん(建築のプロ)から電話があった。「明日コンクリート打ちという事だけど、今のまま施工したら大変なことになります。鉄筋に油が塗ってあるのでコンクリートとうまく定着しません。(強度がまるで弱くなってしまう)明日のコンクリート打ちは止めた方がいいですよ。」(1999/11/10) 13. Tさんは突然の電話にびっくりしたが、それよりもその内容にびっくりした。うまく説明できないし、業者さんにそんな事言って良いのだろうかという気もする。それよりも、今日もDハウスの設計課長さんが来ていたのに、そんな問題をかかえたまま何故工事を進めるのだろうか。 14. 次の日の朝早く現場に行き、工事の人にコンクリートは打たないでと伝え、しばらくして、Dハウスの監督が来た。「なんでそんな事いうんですか」TさんはAさんに言われた事を説明すると、「そうですか。一旦帰って上司と相談してきます」と納得できない様子だった。 15. Tさんには、その施工が悪いのかどうか解らなかった。Aさんの言うことは間違いないと思うけど、どうしたらDハウスに納得させる事ができるのだろうか。 16. 悩んだあげく行政に相談することにした。横浜市の建築事務所に電話で相談すると、「わかりました。それでは2日後に現場を調査しますので、現場はそのままにしておいて下さい。」(1999/11/15) 17. それをそのままDハウスに伝えた。 18. すると、信じられない事にその日の午後に鉄筋の解体を始めた。Tさんは「横浜市建築事務所の方がそのままにしておいて下さいと云う事でDハウスにもそう伝えましたけど」すると職人は「Dハウスの偉い人に、すぐに解体しなさいと命令されたんですよ。」 19. そして現場には綺麗サッパリ何もなくなった。 20. Dハウスに抗議の電話をすると「今回は大変すみませんでした。横浜市には私のほうから連絡しておきます。」 21. そしてDハウスの設計課長より謝罪文が提出された。(後で解ったことだが、サインも印もなかった)”Dハウスのミスでご迷惑をおかけした。今後は現場スタッフを整えるとともに、第三者の検査官により検査する事とする。”という内容であった。 22. そしてその後・・・Dハウスの悪意かどうかわからないが二度と工事は再開しなかった。 23. Tさんは解約を決意した。しかしDハウスは解約に応じなかった。信じられない事に「私達は何も悪くない」と主張する。ラチが開かないので消費者センターで事情を話し、Dハウスを呼び出してもらった。しかし表れなかった。 24. 消費者センターがだめだったので建設省調査指導係に当たってみた。ここではさすがにDハウスも現れた。しかし話は一向にすすまない。Dハウスは「私達は悪くない。工事を中止したのも納得のいく事ではない。」という態度。 25. 建設省調査指導係もTさんに同情し、Tさんに味方をする姿勢をみせた。ところがその頼りの建設省も、「Dハウスよりクレームがあった。行政が民事に関わりすぎている、建設省はそこまで関与すべきではないとのクレームで私達もこれ以上関われません」 26. こうなったら後は弁護士に頼むしかない。しかし個人で弁護士に頼むしかない訳でそれは膨大なお金がかかる事を意味する。 27. そして月に2回弁護士に相談し、1年半年程かかりようやく和解する事ができた。Dハウスは「私達は何も悪くない」「証拠はない」「大谷石が危険だとは言っていない」といいはり、現状があまりにも危ない状態なのでせめて掘ったところを埋めるように言っても「土も掘っていない」 28. そして契約金等を返金することとなったが、仮住まいや引越しの代金は出してもらえなかった。それをするには裁判が必要で、裁判をすれば必ず勝てると裁判官も言ったが、裁判になると3年は普通にかかり相手がのらりくらりとすれば5年〜7年はざらだという。今住まっている仮住まいが期限付きな事、それまでの弁護士費用や時間をとられる事、現場が掘りっぱなしで危ない事等考えると 裁判は諦めるしかなかった。 29. しかもDハウスは「この事は絶対に他言しないでください」という。この「書類に捺印してくれれば和解してあげます」 しかも解約金も最後に値切られたのだ。 Dハウスが現場より完全撤退したのが2001年3月だという。それまでの時間や労力は何だったのだろうか。Tさんは「私たちがDハウスの言う事を簡単に信じたのがいけなかったのです」とういうが、本当にそうなのだろうか。Tさんはその後マンションの広告図面を見るだけで気分が悪くなるようになってしまった。本当に気の毒だ。聞くと日常的にこういう事があるらしい。
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